インド音楽とラーガについて

こちらの絵は、ラーガマーラー絵画と言われるもので、ラーガを絵で表したものです。こちらの絵はラーガ・トーディ

ラーガ・トーディは、この絵のように、優しく美しい女性として表現され、「白い蓮のように美しく立ち上がり、輝く露の滴のように繊細なトーディは、ヴィーナ(女性が持っている楽器)を持ち、森の奥で鹿たちに楽しさと喜びを与えている。彼女の体にはサフランと樟脳が塗られている」ということだそうです。(WIKIPEDIA参照)

ちなみにTodiはこんな感じです。

 

Raga Todi / Ustad Rashid Khan  Youtubeに移行します。

 

ラーガとは?

簡単に言ってしまうと、インド音楽(古典音楽)における旋法、ということです。旋法というのは、音階(ドレミのように階段状に音が上がっていくもの)の上がり下がりの配列というか、どの音を選んで動くのかという決まりのようなもので、選び方で雰囲気が変わってきます。

西洋音楽でももちろん旋法は古くから用いられていて、教会旋法は比較的有名です。ドリアン、エオリアンなどの名前がついています。日本の古典音楽でも呂旋法、律旋法というものがあります。長調、短調も旋法です。

 

これらの旋法は、上がり下がりの違いはなく、12音のどの音を選んでいるのかの違いですが、インドのラーガは、というと、上がる時と下る時の音の選びが違ったり、進行の約束事などがあったり、様々な決まりごとが組み込まれていて、かなり複雑です。そして、その複雑な決まりごとのなかで即興演奏をするというスタイルをとっています。

そして、そのラーガの種類ですが、インド音楽序説(B.C.デーヴァ (著), 中川博志 (翻訳) )によると、

「音楽家たちは、約75,000のラーガがあるという。しかしこの言葉は文字通りではなく、単に仮定上のものである。・・・実際のラーガの数はずっと少ない。おそらく、これまでの歴史で演奏されたラーガの数は2、3千くらいだろう」

ということです。少ないと言っても2〜3000というのも、気が遠くなるような数です。現在、聴ける演奏は、中川博志氏によると、500程度であろうということですが、500でもかなりな数ですね。

演奏家によって新たに作り出されるということも、たまにあるようなので、全てのラーガを覚える、というのはちょっと考えられない話ですね。

そして、もう一つ重要なことは、それぞれのラーガにはラサという考え方がセットになっています。上記の絵画はそのラサの世界を表しているものです。上の絵を見て、イメージする音楽と、実際にラーガトーディーをお聴きになった印象はいかがでしょうか?

ラサについても、後ほど解説いたしますが、このラーガとラサの関係は、非常に重要なものだと言われていますが、なるほどそうだな〜と思うより、インドの人はこのように感じてるんですね・・・、となることの方が多いのが正直なところです(笑)。

 

ヨガ・オブ・ボイスでラーガを用いる訳は?

さて、なぜこのような難解なラーガというものを、ヨガ・オブ・ボイスでは取り入れていくのでしょうか?

 

実はラーガの要素は、私たちが日頃耳にする音楽の中にも取り入れられていたりします。

ジャズの旋律もラーガの影響を受けていると言われていますし、ビートルズがインド音楽に影響を受けていることをご存知の方も多いでしょう。ジョージ・ハリスンはインド音楽の有名な演奏家(シタール)であるラビ・シャンカールとも親交があったこともよく知られています。

旋律だけでなく、インド音楽の持つ様々な要素は、創造性を引き出すような不思議な魅力に溢れているものなのだと思います。

 

ヨガ・オブ・ボイスの創始者であるシルビアも、元は歌手として西洋文化の中で歌を歌ってきた人ですが、インド音楽に魅了され、アリ・アクバル・カーンというインド音楽の世界では有名なサロード奏者の元で(彼はカリフォルニアに学校を作っていたということもあり)、彼が亡くなるまで30年近く弟子として学び、そのことがヨガ・オブ・ボイスが生み出される一つの要素になっています。

ヨガ・オブ・ボイスの発声法や、歌に対する考え方も、やはりインド音楽が元になっていると思います。

 

耳慣れないラーガの音階に出会う体験は、まさにヨガ・オブ・ボイスの中でとても重要なコンセプトである「深く聴く」という力を高めてくれることにとても役立ちます。

また、ヨガ・オブ・ボイスのなかで、コール・アンド・レスポンスというスタイルで声を出すやり方は、ラーガを学ぶ時に、師(グル)が歌ったものをひたすら聴きそのままに繰り返す、というスタイルそのものです。

 

このようにインド音楽の世界で用いられている練習方法を取り入れることは、自分の声を大切にし、声を磨き、声を開き、自由にしていくために、とても都合の良いやり方なのです。

 

ヨガ・オブ・ボイスを学ぶ私たちは、多々あるラーガを歌いこなせるようになる、という必要は全くなく(笑:歌えれば楽しいとは思いますが)、自らの声の可能性を引き出し、自由になるために、ラーガを取り入れている、と考えていただければいいなと思います。筋トレのエクササイズのようなもの、と考えれば良いかもしれませんね。

 

クラスのご案内

ボーカルメディテーション

ラーガ の要素を取り入れて、コール・アンド・レスポンスで歌っていきます。毎回、一つのラーガの音階を取り入れて歌います。

毎月1回日曜 8:45〜10:30

 

ラーガ基礎講座(主に理論です)

インド音楽のバンスリー奏者の中川博志氏に、インド音楽、およびラーガについて、学んでいきます。マニアックな内容ではありますが、インド音楽に限らず、音楽全般の深い知識、人が歌うこと、音楽と関わっていることについてなどのお話も伺うことができます。

毎月1回土曜18:00~20:00(オンラインもあり)